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痴漢で在宅事件になった場合の流れと正しい対処方法とは?

痴漢の疑いをかけられた場合、いったんは警察に連れて行かれても、すぐに釈放してもらえることがあります。このように「在宅事件」になったとき、安心してしまう方がいるのですが、在宅事件は「無罪放免」ではないので、注意が必要です。

今回は、痴漢で在宅事件になった場合の流れと正しい対処方法を解説します。

在宅捜査とその流れ

みなさまは、痴漢に「在宅事件(在宅捜査)」という捜査方法があるのをご存知でしょうか?
在宅捜査とは、被疑者在宅のまま、捜査機関が捜査を進める方法です。
以下では、在宅捜査になった場合の手続きの流れを解説していきます。

痴漢の証拠

「痴漢」の疑いをかけられたら、まずは駅員室に連れて行かれて警察を呼ばれます。

そして、警察に連れて行かれて事情聴取が行われますが、在宅事件の場合、逮捕されないか、逮捕されてもその後勾留されずに釈放されます。
身柄事件では警察に連れて行かれたら、逮捕勾留されて警察の留置場に入れられるので、ここが在宅捜査と根本的に異なります。

痴漢の証拠とは、「手に付いた繊維」「DNA鑑定」「防犯カメラ」などがありますが、それらがそろわなくても被害者の証言が優先される傾向があります。痴漢冤罪は、生まれやすい状況であることを理解しておきましょう。

よって、なるべく早い段階に弁護士に相談し、無罪を証明するか、弁護士を介して被害者と示談、不起訴を獲得することが重要です。
【参考:痴漢に強い弁護士

起訴か不起訴か

在宅捜査が選択されると、被疑者はそれまで通り、外で自由に生活することができるため、事態を重大に受け止めないことも多いのですが、在宅事件になった場合でも「無罪放免」になったわけではありません。その後捜査機関によって捜査が続けられ、実況見分や被害者、目撃者の事情聴取、被疑者に対する取り調べなども行われます。

そして、検察官が被疑者を起訴するかどうかを決定します。

有罪ならずに、前科をつけないためには、痴漢に強い弁護士に依頼して、被害者と示談しておくことが必要です。

被害者と示談していれば、不起訴処分を勝ち取る可能性が高まるからです。

不起訴処分を選択されたら、その時点でその痴漢事件について刑事裁判になるおそれはなくなります。
これに対し、起訴処分を選択されたら、被疑者は刑事裁判の被告人になります。

裁判が進んで判決

在宅で裁判になった場合、被告人宛に裁判所からの召喚状が届きます。

そして、裁判所で数回の期日が開かれて、被告人の犯罪事実の有無や内容について審理が行われます。そして、裁判官が有罪か無罪、有罪になる場合の刑罰を決めて、判決を下します。

このように、在宅事件になった場合でも、最終的に刑事裁判になって有罪になるおそれがあるので、十分注意が必要です。

在宅捜査のメリットとデメリット

メリット

在宅捜査になると、それまで通り、外で自由に生活をすることができます。

どこへ行くのも自由ですし、家族やその他の人との連絡も制限されることがありません。もちろん会社にも通勤することができますし、言わなければ、痴漢の疑いをかけられていることを知られるおそれもありません。

痴漢で被疑者や被告人になっていることが会社に知れると、謹慎処分となったり、ときには解雇されたりすることもあるので大変な不利益がありますが、在宅捜査になったら、当面そのようなおそれはなく、安心です。

このようなことから、「身柄事件か在宅事件のどちらが良いか?」と聞かれたら、まず間違いなく「在宅事件」だということになります。
その意味では、痴漢でいったん警察に連れて行かれても、すぐに釈放されて在宅事件にしてもらえたら、「とりあえず、身柄事件にならなくてよかった」と安心して良いと言えます。

デメリット

ただ、在宅事件にもデメリットがあります。それは、いつ起訴されるかわからないことです。
在宅事件になると、「釈放されたから、もう大丈夫」と思われることがあります。

しかしこれは大きな勘違いであり、在宅事件になっても無罪放免になったわけではありません。
身柄事件にするか在宅事件にするかは、警察や検察の捜査方法の違いであり、在宅事件になっても捜査自体は継続するのです。

そこで、在宅事件になった場合、ある日突然警察や検察に呼び出されて、取り調べを受ける機会があります。
検事調べが行われると、その後まもなく検察官が起訴するかどうかを決めますが、このとき起訴を選択されたら、在宅事件の被疑者であっても、刑事事件の被告人になってしまうのです。

身柄事件の場合であれば、逮捕されてから最大23日間しか身柄拘束ができないので、その間に必ず起訴されるかどうかが決まりますし、不起訴処分となった場合には無罪放免となります。
これに対し、在宅事件の場合には、いつのタイミングで検察庁から呼出があるのかもわかりませんし、起訴・不起訴の判断が行われるのかもわかりません。
そこで、被疑者にしてみると、「忘れた頃にいきなり起訴されて仰天する」ことになってしまい、予想していなかった不利益を受けます。

在宅捜査で重要なポイント

在宅捜査が選択された場合、不利益を小さくするためには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか?以下で、重要なポイントを確認します。

無罪放免

在宅事件になった場合、どうしても緊張感がなくなって、まるで事件が終わったかのように感じてしまう方がおられます。
しかし、在宅捜査になった場合、捜査は継続していますし「被疑者」という、犯罪の疑いをかけられた立場であることは間違いありません。そこで、不用意な言動は慎むべきですし、警察や検察からの呼出があったら、必ず応じるべきです。

起訴されたら「前科」がつく

次に、起訴されたら「前科がつく」ことを理解し、そうならないように対処することが必要です。

刑事裁判の有罪率は99.9%以上

そのように聞くと「実際にやっていないなら、有罪にならないのだから、前科はつかないはず」と思われるかも知れませんが、実際にやっていなくても有罪になることはよくあります。
日本では、刑事事件になった場合の有罪率が99.9%以上です。

中にはえん罪もありますし、実際に刑務所に入った後にえん罪が明らかになって何十年も経って再審によりようやく出てこられる方もおられます。

痴漢の場合、被害者が被害事実を供述していて、そこに矛盾がなく、状況的にも痴漢が行われておかしくない状態であれば、「実際はやっていない」ことを証明することが難しくなることが多いです。
また、無罪を争うのは、大変な労力がかかります。無罪を立証するためには、自分に有利な証言をしてくれる目撃者を探したり、当時の状況から痴漢が行われるはずがなかったことなどを証明したりしなければいけませんが、通常このような証明は非常に困難を伴います。
そこで、「やっていないから前科がつかない」ことにはなりません。在宅事件であっても、いったん起訴されたら、99.9%以上の確率で有罪になることを覚悟しなければなりません。
たとえ罰金刑であっても有罪判決を受けたら「前科」がつくため、痴漢事件で起訴されたら、ほとんどのケースで前科がついてしまいます。

前科

前科について、もう少し詳しく知っておきましょう。

前科は、過去に犯罪を犯して刑罰を受けたという履歴です。捜査機関のデータベースで把握されていて、何かあったときには、照会できるようになっています。

たとえば、犯罪の疑いをかけられて警察に逮捕されたら、まずは前科照会をされて、過去に犯罪を犯していないかどうかを調べられます。このとき、同種前科があると罪が重くなりますし、執行猶予中の犯罪であれば必ず実刑となり、前回の分も合わせて刑務所に行かなければならないので、服役期間が非常に長くなります。

また、「前科がある」ことを周囲に知られると、社会内でも非常に生活しにくくなります。
前科があることを、ひた隠しにして生活している人もたくさんいますし、それでもどこかから噂が出て、会社の人間関係や隣人付き合いに支障が出るケースも多いです。

罰金でも前科

痴漢事件では、罰金刑になることも多いです。

そうなると、刑務所に行くことも執行猶予がつくこともなく、判決後に送られてくる罰金の納付書を使って数十万円の罰金を納付したら、それだけですべてが終わります。

特に在宅事件となり、罰金刑で終わった場合、本人の負担は非常に軽いため、あまり重大に捉えないことが多いです。
しかし、罰金刑も立派な前科ですから、捜査機関のデータベースに残りますし、次に何らかの犯罪を犯したときには、捜査機関に照会して知られてしまいます。再度痴漢をしてしまったら、次は罰金では済まなくなるでしょう。

略式裁判でも前科

痴漢事件では、略式裁判が選択されることもよくあります。略式裁判とは、正式な裁判ではなく、書類上の審査だけで罰金刑が選択される手続きです。

在宅事件で略式裁判を選択された場合には、被疑者は一回も裁判所に行かずに済みますし、自宅に送られて来た罰金の納付書を使って、命じられた支払をしたらすべて終わりますので、本人に「前科がついた」という自覚がないことが多いです。しかし、この場合も正式な前科がついているので、注意が必要です。

前科は一生消えない

前科がついたら一生消してもらうことはできません。「たかが痴漢。たかが罰金」と軽く考えていると、大きな不利益を受けまるので、そういった考え方は捨てましょう。

このように、在宅事件でも、その後起訴されたら、非常に高い確率で一生消えない前科がつくことを、まずは理解し、自覚しなければなりません。

前科がついた場合の不利益

前科がついた場合の不利益の内容についても、確認しておきましょう。
解雇される可能性が高い
まず、サラリーマンの場合、前科がつくと解雇されるおそれが高いです。多くの企業では、就業規則において「刑事事件で有罪判決を受けた場合、解雇する」という懲戒事由を定めているためです。解雇までされなくても、減給や配置転換、降格などの処分を受ける可能性が高いですし、将来の昇進も難しくなってしまうでしょう。
ただし、痴漢事件の被疑者となっても「有罪判決」を受けなければ解雇されません。痴漢事件を起こしでも、不起訴になったら不利益な処分を受けずに済みます。

ビザがおりない、おりにくい国がでる

次に、前科がつくと、渡航先の国によってはビザが下りないことがありますし、絶対にビザ取得が不可能ではない国でも、ビザがおりにくくなるケースがあります。
すると、海外転勤や海外出張の際、渡航のためにビザ申請をすると「なぜかビザがおりない」ということになってしまい、会社に調べられて前科がバレてしまいます。すると、就業規則に従って解雇その他の懲戒処分を受けるおそれがあります。

資格を失うおそれ

前科がつくと、特定の仕事に就けなくなったり資格取得ができなくなったりすることがありますし、今就いている仕事を続けられなくなるおそれもあります。
国家資格にはさまざまなものがありますが、禁固刑以上の刑罰に処せられた場合には欠格事由となるものがたくさんあるためです。
資格によって、欠格期間が異なりますが、執行猶予中は資格取得や仕事の継続ができなくなる例が多いです。また、実刑になった場合には、刑の執行終了までの期間やその後数年間、その仕事に就けなくなります。
前科によって制限される資格には、以下のようなものがあります。

  • 国家公務員、地方公務員
  • 自衛隊員
  • 商工会議所の役員
  • 保育士
  • 社会福祉士・介護福祉士
  • 質屋、古物商、貸金業者
  • 公認会計士
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 弁護士、裁判官、検察官
  • 不動産鑑定士
  • 建築士警備員
  • 宅地建物取引主任
  • 校長・教員

不起訴処分

前科がつくと不利益が大きいので、在宅事件になった場合も前科をつけないように対処すべきです。そのためには、検察官に「不起訴処分」にしてもらう必要があります。
不起訴処分になった場合には、そもそも刑事裁判になることがないので、有罪判決を受けることがなく、前科がつくおそれはなくなります。

不起訴処分を獲得する方法

逮捕

示談

不起訴処分を獲得するために最も有効な方法は、被害者との示談です。
示談とは、慰謝料の話し合いをして被害弁償をすることです。
刑事手続きでは、被害者との間で民事的な問題が解決されていたら(損害賠償が行われていたら)、情状が良くなって刑が軽くなります。被害者が犯人を許していたり、被害者自身が「刑を軽くして下さい」と言っていたりすると、より効果的です。
このことは、検察官が起訴するかどうかを決める際にも同じであり、被害者との示談ができていると、検察官が不起訴処分にしてくれる可能性が極めて高くなります。

在宅事件になった場合の示談の注意点

身柄事件になった場合には、早く釈放されたいということと、起訴決定までの期間が短いことから被疑者は必死で示談交渉を進めようとするのですが、在宅事件になると、どうしても被疑者に緊張感が欠けるため示談交渉に取り組まないことがあります。

しかし、事件後時間が経つと、被害者の方も事件の記憶が風化します。忘れた頃にいきなり犯人から「示談してほしい」などと言われると、「今になって何を言っているのか!」と憤り、かえって感情を逆なでしてしまうおそれもあります。

在宅事件になった場合でも、早期に示談交渉を始めて、確実に早めに示談をしてしまうことが大切です。

在宅事件でも、被害者と示談!痴漢に強い弁護士相談

効果的に示談交渉をすすめるためには、痴漢に強い弁護士に依頼することが必須です。

そもそも、痴漢の被疑者本人には、被害者の連絡先を知る方法すらないことが普通ですが、弁護士であれば、検察官と連絡を取り、被害者の連絡先を知ることができます。
そして、弁護士から、被害者にコンタクトをとり、被疑者が謝罪したいと言っていることを伝え、示談の打診を行います。

被害者の気持ちを逆なでしないように注意しながら示談を進め、示談を成立させます。このとき、うまくいけば、示談書に「被疑者を許します」という一文を入れてもらうことなどもできて、被疑者にとってより有利に働きます。このような手続きは、被疑者が一人で進めることは不可能です。

今、痴漢事件の被疑者となって在宅で捜査が進められているなら、前科をつけないために、起訴される前に被害者と示談する必要があります。時間が経つとその分困難になるので、早めに弁護士に相談しましょう。